小川哲夢は、家族思いの優しい少年だったが、両親の不和や小学校でのいじめが原因で、内にこもりがちだった。しかし、ある時両親が経営する動物プロが購入した仔ゾ ウ・ランディと出会い、その神秘的な力に触れ次第に心を開いていく。環境と天賦の才能により、ゾウの言葉を理解できるほどの資質に恵まれた哲夢は、日本人初の象使 いを目指し、タイのゾウ訓練センターへ留学する。
哲夢は言葉もわからない異国の地で、初めは地元の子供達やゾウにさえバカにされる始末だった。しかし己の力を信じ、人一倍の努力によって、次第に人種を超えた友情 を築き、ゾウの心を掴み、少年から青年へとたくましく成長していくのだった。
帰国してすぐ本格的な調教を始めた哲夢の悩みはランディだった。天真爛漫なランディは調教を理解せず、何度教えても失敗するのだった。そしてそんな哲夢の苛立ち を敏感に 感じたランディはパニックに陥り、その場に転倒してしまう。
「ランディに何するの?」思わず小百合が止めに入る。「おふくろ、邪魔しないでくれよ。ランディがいつか人を傷つけたら、どうなるかわかるだろ? ランディをそん な目に合わせないようにするのが、オレたちの役目じゃないか」哲夢の必死の思いに、ランディが立ち上がった。哲夢の出す指示に答え、鼻先を高々と上げる。哲夢 は、好物の角砂糖をランディの口に放りこんでやり、頭を抱えてなでまわした。哲夢は泣いていた。ランディにきびしく当ることがいちばん辛いのは、哲夢自身だった。
彼は、「日本中のゾウを幸せにする。」「ゾウたちの楽園を作る。」と宣言し、日本人初の象使いとして活躍し始める。
そんな頃哲夢は、年上の女性絵美と巡業先のイベントで知り合う。
しっかりものだけど、心優しい彼女に一気に惹かれていく哲夢。
象使いの仕事、そして恋にと、全力疾走していた20歳の秋だった…
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